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はじめに
- 国内には、寝たきりの高齢者が 150万~200 万人いると言われています。
寝たきりの方の多くは、床ずれ防止や体位保持のためにいくつものクッションを身体に密着させますが、クッションが身体の熱をため込んでしまい、その「こもり熱」からくる発汗がつきものです。
あせもや蒸れによる皮膚疾患にかかりやすく、頻繁な着替えも必要とします。 -
- この商品は、「こもり熱」に悩まされている患者さんが快適に過ごせるように、そして介護に携わる方々の負担軽減にお役立ちできることを願って、ひとりの主婦により開発されました。
今回は45個限りのご提供となりますが、もっと沢山の方にお届けできるよう量産化を考えております。
このプロジェクトを通じ、「熱・こもらーず」が本当に価値のある物なのか、世の中に必要とされる物なのかを確かめさせていただきたいです。
皆さまからのご支援金は、今後の商品改良や本格展開のために活用させていただきますので、応援していただけますと幸いです。
「熱・こもらーず」がこの度、IBUSHIGINを介して世の中にデビューさせていただけますこと、心より御礼申し上げます。 -
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開発者の想い
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母の大病から在宅介護まで
- 母が脳疾患で救急搬送されたのは、7年前の2月の寒い日でした。
幸い一命をとりとめましたが、後遺症として半身麻痺、失語症、嚥下(えんげ)障害が残り、リハビリをしながら日常の動作を取り戻す訓練を始めました。
76歳という年齢は寿命を全うしたと言うにはまだ早いと感じ、リハビリ病院での回復を期待しましたが、思うようには回復せず、医師からは点滴での栄養を止めて胃瘻(おなかに開けた穴にチューブを通し、胃に食べ物を直接流し込む方法)を提案されました。 -
- 直接栄養を取ることができれば体力も出てくるので、並行して嚥下(飲み込み)の訓練をすれば、半身麻痺でも動く方の手を使って食べる喜びを感じ、食べたい気持ちがリハビリにも繋がるのではないかと考え、胃瘻にしてもらいました。
- しかし高次機能障害という脳のダメージもあり、自分で食べられるまでには回復せず、日ごとに寝たきりになって、他人の手を借りなければ寝返りすら打てないようになっていきました。
病院と隣接する老人保健介護施設に入所し、独り暮らしになった父も、母の介助に足しげく通いました。
「生きているのだから、たとえ一口でも口から何か食べさせてあげたい」と懇願しペースト食を提供してもらい、毎日1回だけの食事の時間には必ず介助に行っていました。 - 施設でお世話になっている間、母は特に病気をすることもなく、比較的安定して過ごしていました。
しかし施設での生活が3年を過ぎたころ、父にすい臓がんが見つかり余命を告げられると、あっけなく天に召されてしまいました。
母のことに気を取られ、父の体調の異変に気付いてあげられなかったことを娘として今でも深く後悔しています。
父は、自分が母を看取ることができないことを無念に思っていたようで、母のことを頼む、と私に言い残して旅立ちました。
父の思いを受取り、母を看るため、私は仕事を辞め自宅での介護を決意しました。 -
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「こもり熱」との闘い
- ケアマネージャーさんと相談しながら、訪問医、訪問看護、入浴のためのデイサービス、嚥下指導の言語聴覚士の訪問、リハビリを兼ねた作業療法士の訪問、介護用福祉用具のレンタル、たくさんの契約書類にサインしました。
準備が整い、いざ在宅での介護を始めてみると、たくさんの関係者に支えられながら在宅介護は行われているということを痛感し、日本の介護保険制度はすごいなと感心するも、やはり家族は24時間責任を持たなければならず、慣れるまで気が抜けない日々でした。 - 母の場合、特に体温調整が難しく、年間通して空調の整った病院や施設では皮膚疾患は無かったようでしたが、家のエアコンでは寒すぎたり暑かったりと常に温度調整が必要でした。
胃瘻の患者は特に汗をかきやすいようで、すぐに体温が上昇します。
でも寝たきりで自分では動けないため、床ずれが出来ないように2時間おきに身体の向きを変えて、その体位を保持するためのクッションを身体に密着させなければなりません。 - 拘縮(こうしゅく)がある母は、胸郭を広げて呼吸しやすくするために、脇を少し広げた姿勢を保持します。
この体位保持に使ういくつものクッションが身体の熱をため込んでしまうため、背中や首元、脇の下が汗でびっしょり濡れ、1日に何回も着替えが必要です。
当然、シーツも濡れます。取り換えが面倒になってタオルを間に挟むなどしても、余計に暑くてまた汗をかく。
するとあせもができたり蒸れて湿疹ができたり、紙おむつで蒸れてかぶれたりと皮膚疾患との闘いで、皮膚科の訪問医に来てもらい薬を何種類も処方してもらうことが常でした。 - また、当時はコロナ真っ只中で誰もが発熱に敏感でした。
37.5度以上の熱があると、PCR検査が必要だったり、デイサービスには行けなかったりと、病気の熱ではない「こもり熱」で自宅待機を余儀なくされることがありました。
この“クッション由来のこもり熱”をなんとかできないものかと訪問医に相談すると、「通気性が良いと書かれたものはあるけれど、本当に通気性の良いクッションは無いわね。寝たきりの患者さんのこもり熱は共通の悩みなのに…」と言われました。
母だけが「こもり熱」に悩まされているわけではない、他の寝たきりの患者さんも同じ悩みを抱えているということを知り、それなら通気性に特化した熱がこもらないものを自分で作ろうと思いました。
これが「熱・こもらーず」の発案のきっかけとなります。 -
- (今はまだ、ひとつひとつ手作りしています。多くの人にとって価値あるものということが再認識できたら、量産化に向けて本格的に動いていきたいと考えております。)
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試行錯誤を経てついに商品化
- 肌と肌が密着する事で身体の熱がこもるので、熱を解放するには穴の開いた筒状のクッションがあれば良いと思い、100円ショップで見つけたのがポリプロピレンの園芸用ネットでした。
これを丸めて使うとちょうど脇の下にフィットし肌触りも悪くなく、適度につぶれることで無理な圧迫感もなく、通気性に優れ身体の熱も開放されました。
丸めたネットの両端があたると危ないので、安全に使用できるよう伸縮性のゴムがついたタオル生地のヘアバンドで両端を保護すると、素晴らしいネットクッションが出来上がりました。
これが、「熱・こもらーず」第1号です。 -
- この第1号は好評で、ぜひ他の患者さんにも使えるように販売して欲しいという声を、介護に携わる関係者から多く寄せていただきました。
しかし、長く使ううちにポリプロピレンのネット部分が割れてしまうという欠点が見つかったのでした。
これでは安心して使うことはできません。
何とか割れないネットは無いものだろうか…。
ですが、個人の一主婦が開発するにはここまでが限度でした。 -
- 割れない素材が欲しい、割れないネットを製造して欲しいと思っていたときに、夫の誘いで「発明学会」へ商品化の相談に行くと、「発明コンクール」への出展を勧められました。
コンクールにはたくさんの企業が見に来るので協力してくれる会社が見つかる可能性があると。
発明コンクールに出展すると奨励賞を頂き、より大規模な「産業交流展」にも出展させてもらうことができました。 - そこで出会った某企業の社長さんからご紹介いただいたのが、現在共同開発をしていただいている「光和ネットサービス株式会社」でした。
光和ネットサービスさんは介護見守りシステムの開発をされており介護施設との関わりも深く、共感していただける部分が多くとても積極的に協力いただけました。
割れないネット、弾力があり手触りも優しいネット、介護に相応しい安全なネットを社長さん自ら探し回り、関係各社にも声を掛け、たくさんの資料や素材の提供をしてくださいました。
私も介護の合間にいろんなホームセンター等に通い、手芸用品、文具、キッチン用品…あらゆる素材を確かめ、光和ネットサービスさんと共に試行錯誤を繰り返しました。 - (写真は、数々の試作品の一部。すべて却下品です。)
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- 毎回、試作品を作っては在宅介護に訪問してくださる関係者の皆さんに意見を聞きました。
何度も何度も改良し、安全性、反発力、弾力性、手触りなどを母で確かめ一喜一憂しつつ、「1日も早く完成できる日を楽しみにしています」と皆さまに励ましていただき、やっと、ここまで納得できる製品にすることができました。
長い道のりで母にも苦労をかけましたが、これが多くの方の役に立つ製品として広まれば、母も報われると思います。
寝たきりで動けなくても、話せなくても、母が生きていてくれたから出来たのが「熱・こもらーず」なのです。 -
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商品の特徴
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通気性に加え、冷却性がうれしい
- 筒状の網素材にしたことで通気性抜群なのは勿論ですが、中に保冷剤が入れられるのでアイシング効果も得られます。
商品には、この形状に合った、なおかつ適度に冷えて結露しにくい保冷剤をお付けしています。
付属の保冷剤の中身は純水を完全滅菌処理していますので万が一漏れて食品にかかっても安全安心です。 -
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衛生的なカバー
- カバーはメッシュ地で肌触りが優しく、取り外しができるので簡単に洗えていつでも清潔にお使いいただけます。
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- おまけに、組立て式なので使わないときは A4サイズぐらいに収まり、保管が楽です。
避難用具セットに入れておけば、万が一の災害時にも安心です。 -
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ご使用いただいた皆さまからの声
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これで解消!寝たきり介護の最大の悩みはこもり熱
- 寝たきりの母は拘縮により腕を身体に密着する姿勢なので、いつもクッションやタオルを腕や脇、脚部などの関節部に挟んでいましたがこもり熱で汗をかくので着替える頻度が多く悩みでした。
胃ろうもしているので発汗が増え湿疹や汗疹などの皮膚疾患になり易かったので何回も着替えさせなければならず介護負担が増えていました。
でも「熱・こもらーず」を使ってからこもり熱の悩みが解消され介護が楽になりました。
(要介護4 拘縮による寝たきりの方(胃ろう)) -
保冷剤が使用できるところが素晴らしく、通気性と弾力が心地いい
- 股関節脱臼の防止に、就寝時に足にクッションを挟んでいましたが、「熱・こもらーず」をクッション代わりに使用すると弾力が心地よく介護が必要な方には最適です。
気温が高い時は熱がこもり汗をかくので、車椅子と脇腹の間や背中の間に入れて使っています。
また保冷剤が使用できるのが素晴らしいです。
(脳性麻痺による身体1級 車いすの方) -
とても通気性がいいので使っている部分だけでなく全身が涼しく感じる
- 自宅や外出先でも車いすの背当てに挟んで使用しています。
間に挟んでも気にならないしそのくらいソフトで通気性がいいです。
保冷材を入れても冷たすぎず丁度良く、汚れても簡単に洗えるので衛生的です。
(水頭症 身体1級車いすの方) -
番外編
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- (体温が上がりやすい小さなお子様のお昼寝タイムにも、喜んでいただいています。)
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光和ネットサービス株式会社より
- 試作段階ではいくつもの課題がありましたが、お互いにアイデアを出し合いながら協力してここまでくることができました。
「熱・こもらーず」には、細かなこだわりポイントがいくつもあります。
例えば、①組立式なのは、コンパクトに畳んで持ち運びができ、防災グッズに入れておけば避難先でも使用できるように。
②網ネットが2つセットなのは、二重にして柔らかさを調整したり、両脇で2個使いができるように。
③長さ22cmにしたのは、ベッドの上や車椅子での使用で邪魔にならないため。
「熱・こもらーず」は、開発者の情熱と経験を結集し、介護する方、される方のことを考えて作られた商品です。
本格的な商品化に向けて、皆様のご支援をいただければ幸いです。