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《魔女になった日》
- 人間だった頃の私は、埼玉県宮代町の新しい村にあるハーブ園で、ハーブの栽培管理を行っていました。ハーブは、料理の香りづけやお茶、染色、芳香剤、薬、虫よけなど、さまざまな用途で私たちの暮らしに取り入れられています。以前の私は、ドライハーブティーの薬っぽい味と独特の臭いが苦手だったのですが、ハーブ園で摘みたてのレモンバーベナのハーブティーを口にした瞬間、「ハーブティーは不味い」という呪縛から解き放たれたのです。
レモンバーベナは、香水木(コウスイボク)という和名の通り、香りの高さが特徴のハーブで、レモンに似た爽やかな香りがします。すっきりとした味わいで、ハーブティーを口にするときに鼻からも入り込む柑橘系の香りで、一口でノックアウトされてしまいました。
その時からハーブにココロを奪われ、いそいそと図書館に通い、ハーブに関する文献を読み漁りました。 -
- ハーブ図鑑で、エジプトの陵墓に眠っていたツタンカーメン王の棺から、コーンフラワー(和名:ヤグルマギク)やオリーブなどで作られた花飾りのようなものが見つかったという文章と写真を見た時には、現代において同じ植物と関われる事にとても感激しました。
ハーブを使って染色も行いました。摘みたての藍はウグイス色に、ダイヤーズカモミ―ルの花びらは黄色に染まります。染色液を作るときは、大きなお鍋で煮だしていくのですが、今思えば、この時から魔女修行が始まっていたのかもしれません。
そんなこんなで、どっぷりとハーブ漬けの日々を送っていたある日のこと、これからの指針であるかのような言葉を目にします。それが「薬草魔女」という言葉です。 -
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シアワセを運ぶ魔女になる
- 薬草魔女とは16~17世紀に実存した、薬草を使って人々を助けてきた女性たちのことです。彼女たちは、治療や健康に欠かせないハーブを自宅の周りで育て、そのハーブを使って薬を作ったり、煮だして飲んだり、食物油と混ぜて軟膏にしたり、薬草魔女たちは、ハーブを使って、人々の病気を治していたのだそうです。
そこで私は、「病気を治すことはできないけれど、おいしいものを作ってシアワセにしてあげることはできるのではないか」と考え、ドイツ語の辞書を片手に、あーでもない、こーでもないと調べ、昔は薬草を煮だしていた薬缶から名前をもらおうと「薬缶から生まれたものぐさ魔女」という意味のケッセル ホン ファウルペルツと名乗り魔女になる決心をしました。 -
"魔女のコッペンパ"とは
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コッペンパ?コッペパン?
- 2015年に浦和区仲町にて「魔女のコッペパン」という店舗名で、コッペパン専門店を創業しました。
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- 当時はコッペパンが巷で流行りだした頃で、ご好評をいただいておりましたが、「もっと広い場所で色々な種類のパンを食べてもらいたい」という想いから、埼玉県内でいい場所を探していたところ、ご縁があって2019年に現在の見沼区に移転しました。
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魔女のコッペンパ誕生
- 見沼区にお店を開くにあたり、食パンや菓子パンなどのパンも増やしていくことになり、店名が魔女のコッペパンでは合わないと感じていましたが、なかなか決められずにいました。そんな中、知人に宛てた手紙の署名を書き間違えてしまうのです。
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- 知人宛ての手紙には「魔女のコッペンパ」と書かれていました。
潜在意識がそうさせたのか、ただの間違いなのか。とにもかくにも「コッペンパ」という響きが、とても心地よく感じました。パン屋人生第2のスタートとして「魔女のコッペンパ」は、こうして始まりました。開店当初は、何人ものお客様に「看板間違えているわよ。コッペンパになっている。」と小声でささやかれ続けました。コッペンパなんてありえない名前ですよね! -
コッペンパの顔「バム」
- 魔女のコッペンパのロゴマークは、魔女帽子に顏がついています。この子は魔女の化身でなんでもバクバク吸い込むように食べるのでバキューム(略してバム)という名前があります。創業した頃は、工房とお店が別の場所にあり魔女不在ということで、ロゴマークの帽子には顔がありません。見沼区の現店舗では、工房とお店が一緒で、魔女がいつもお店にいるので、魔女帽子には、魔女の化身である顏がついているのです。
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《パンへの愛》
- パン生地は、温度や湿度に深く関わってきます。季節によって水分量も変えていきます。パン生地をみて、どんな状態かすぐにわかってしまう、言い換えれば「パンの気持ちがわかる」パン職人さんは、この道45年。毎日何十種類ものパンの成形と焼きを担当しています。職人さんの愛情がこもったパンたちなのです。
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コッペパンへのこだわり
- コッペパンに使用する小麦は、埼玉県産の2種類を含めた合計5種類の小麦をブレンドしています。それぞれの小麦の良さを活かすために、何十回も試作品を作りました。配合のバランスが悪いとパサパサになってしまったり、まったく膨らまないコッペパンもありました。
ようやく辿り着いたコッペパンはもっちりとした食感の中にも歯切れの良さがあり、更にコッペパンに挟む食材を引き立たせるような絶妙なバランス感覚が実現し、秘伝のレシピとして今でも変わっていません。
コッペパンは中種法で作ります。小麦粉を捏ねて熟成させるためにしばらく休ませた生地を新たな小麦粉を加えて生地を作って成形し、一晩寝かせてから焼き上げています。眠れる森の美女ならぬ「眠れるコッペパン」という訳です。 -
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「ごはん食パン」への愛
- 2年位前から社長とともに、炊いた発芽玄米を入れて作る食パン作りに燃えています。瞳に炎がみえるでしょう?
ご飯のお陰で、唾液が取られず飲み込みやすく、4日位は柔らかさが持続する食パンになっています。 -
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《お客様とコッペンパ》
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お客様の人生の歩みに寄り添う
- 初めてのご来店はご主人おひとりでした。「女房が妊娠したので、パンを買いに来ました。はちみつは、妊婦が食べても大丈夫ですか?」とお話しされたことが、いまでも印象に残っています。その後、お腹が大きくなった奥様と一緒に来てくださり、赤ちゃんが生まれてからは抱っこして家族で来られていました。そして今、しっかりとした足取りでパパとママと3人でご来店、娘さんと魔女とはハイタッチをする仲になっています。
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子供の成長を微笑む
- 店舗入り口には魔女のドアホンがあり、ボタンを押すと舌が出てきます。怖がって押せないお子様もいますが、ある時「ボタン押せたよ!」と嬉しそうに報告してくれる男の子がいました。もちろん傍らには、「成長したね~」と目を細めたママがいました。
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かけがえのない存在
- 壁に貼られたランチメニューを指して「これと、いちごジャムのコッペパン」と毎日のように来てくださる方が、ある時からぱったりと来られなくなりました。しばらく経ったある日のこと、一人の女性が来店され『弟がずっとお世話になっていたようで。先日亡くなってしまったの。弟が好きだった「いちごジャムのコッペパン」をお供えしたいのでいただけますか』と話されました。お姉さまがわざわざ亡くなられたことをお伝えしに来てくださったのです。
お姉さまに「毎日のようにランチに来てくださり、私たちはおじいちゃんと呼ばせていただいていた」とお伝えしたところ、『弟は離れたところに独り暮らしだったので、きちんと食事をしているのか心配していたけれど、パン屋さんでお世話になっていたのね』と涙ながらに喜んでおられました。 -
- 「魔女のコッペンパ」がお客様にとって「かけがえのない存在」でいられることが私の心の支えになっています。
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《コッペンパを怪しく楽しいお店にするために》
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より怪しく魅力的な店舗へ
- 魔女のコッペンパは、おいしいパンや魔女の世界を表現した店舗を通じて、小さなお子様のキラキラした目をもっともっと輝かせたい。小さなお子様の姿を見て、微笑むシニア世代の方々にもっと喜んでもらいたいと気持ちがドンドン膨らみ、体が破裂してしまいそうです。
これからも皆様とともに【もっと怪しくて楽しい】コッペンパにしていきたいと思っています。 -
魔女の聖地になる日も近い
- 店舗に入ると、大きな魔女鍋の棚が目に飛び込んできます。棚にはおいしそうなパンや怪しそうな焼き菓子が並びます。奧に進むと、棚にはいっぱいの瓶詰がぎっしり。魔女のことだから、得体のしれない瓶詰があるかもしれません。天井からは、コウモリやネズミたちが、灯りをともしています。怖がらなくて大丈夫、魔女はシアワセのおまじないをかけたいだけなのです。「コッペンパ~」
魔女の聖地としてふさわしくなるために、怪しく楽しい魔女食を焼き菓子で表現し、店舗内装を魔女人形や動くおもちゃなど怪しい雑貨を集めてきました。全体としては、まだまだなので中央に大きな鍋型の棚や瓶をずらりと並べて棚などを配置して「魔女のコッペンパ」=「魔女の世界」を作っていきたいと思いました。中央に棚を置くことによって、飲食のスペースと怪しい焼き菓子の売り場が広がります。また、照明にも手を加え、魔女感たっぷりの雰囲気になります。 -
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みんなに店舗をみて楽しんで幸せになってもらいたい
- 若いパパやママと一緒に来る小さなお子様は、キョロキョロしながら、おもちゃを触ったりあちこちを行ったり来たり、そんな姿を微笑ましく見つめるシニア世代の方々。魔女のコッペンパは、初対面のお客様同士でも会話が始まり、自然に笑顔こぼれる場所なのです。
シアワセのおまじない「コッペンパ~」 -
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応援メッセージ
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プロジェクトに参加した日本薬科大学の学生様
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中村様
- この事業に参加させていただきました、日本薬科大学の漢方研究部部長の中村です!
今回私たちは、漢方に特化した大学として漢方や薬膳の知識という面でのお手伝いなどをさせていただきました。
菅原さんのお菓子はどれもおいしくて、感想を求められたとき「おいしいです!」の一言に尽きるくらいでした。お店の雰囲気も菅原さんのこだわりが随所にみられる素敵な場所です!ぜひ、足を運ばれてみてください!また、今回のお菓子はさいたま産の小麦を使用したお菓子になっています。地元さいたまのおいしいものを是非皆さんにも味わっていただけると幸いです!! -
三枝様
- この事業に参加させて頂きました、日本薬科大学の漢方研究部の三枝です。今回お菓子にハーブを用いるということでお手伝いさせていただきました。
魔女のコッペンパさんのお菓子にはたくさんのこだわりがあります!お菓子に使われているハーブはどれも相性が良く、また見た目も魔女要素の多いものとなっており、どちらもここでしか食べられないものかなと思います!それぞれのお菓子に名前の由来があって、食べる前から楽しめるものです!
誰かにあげるのにも、自分のために買うにもおすすめです!このお菓子を食べて、たくさん写真を撮って、見た目も味も楽しんでいただきたいなと思います! -
渡辺様
- 私は3回の魔女のコッペンパに参加して、コッペンパさんの魔女に関する発想に関心を持ちました。特に指の形をイメージしたお菓子の発想が良かったと思います。自分自身の中で1番美味しかったのは、3日目にいただいた米が含まれているクッキーです。甘すぎず、食べやすい大きさであることから、小さいお子様や高齢者にも人気が出るお菓子であると感じました。
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武藤様
- 試食会では、ハーブを使ったお菓子をいただきました。特に印象に残っているのはバジルのお菓子です。バジルはお菓子に使われるイメージが全くなかったのですが、相性が良く非常に美味しかったです。手や指をイメージした形になっていて、少し怖さもあり、楽しみながら食べられます!
コッペンパさんの店内も魔女をイメージしていて非常にワクワクしました。おすすめなので、ぜひコッペンパさんの洋菓子を食べてみてください! -
- 左から 武藤様・中村様・魔女・三枝様・渡辺様
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孫達と箪笥のスタンプを楽しむ常連M様
- 元祖コッペパンは元より食パンが旨すぎる。小生のお薦めは発芽玄米パンである。然し、魔女の菓子パンには困ったものだ。あのキャラで孫達を虜にしたうえ、研究を重ねた自慢のコウモリの手作り食材パンは、今宵のワインの友の筈が主食に化けてしまうのだ。おお怖い。
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家族で通っていただいている常連K様
- 初めてコッペンパさんのパンを食べた時、こんなにも美味しいパンがあるんだ!と感動したのを今でも覚えています。食べると笑顔になって、心も身体も元気になって、幸せな気持ちになれる。まるで魔法のパン屋さんです。コッペンパさんは素材にも拘っているので子供から大人まで安心して美味しい物が食べられる所もとてもありがたいです。パンが美味しいのはもちろんの事、ランチやお惣菜、魔女さん特製の焼き菓子やジャム、販売しているお野菜や商品など、コッペンパさんに今では家族全員でお世話になっていて、我が家はコッペンパさんが大好きです。そして、これからもコッペンパさんの幸せな魔法の世界がとても楽しみです。
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《おわりに》
- 店舗にご来店いただけない方も、魔女の世界を楽しんでいただきたく、日本薬科大学の監修のもと武蔵野銀行が見沼で育てた小麦と魔女畑のハーブを使用した焼き菓子をお届けします。ハーブが「ふんわり香る」を念頭に、どなたでも召し上がれる焼き菓子に仕上げました。日本薬科大学の学生さんとの試食会を繰り返し作り上げた自信作です。また、小さめに作ってありますので、お子様のおやつにもピッタリです。
日本薬科大学の先生と学生さんには、ご来店いただき雰囲気を感じながら、試食を楽しんでいただきました。もちろん魔女もキャンパスを訪れ、交流を深めることが出来ました。お菓子の説明書は、学生さんにご協力をいただきながら作成しました。お子様が、おじいちゃん、おばあちゃん、パパやママと一緒に焼き菓子を食べながら、会話を弾ませ楽しんでいただければ幸いです。 -