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始まりは自宅の建て替え。 ふと思った「ここに映画館があったなら…」それは可能なのか?
- 家族の会話から始まった物語は、映画館を含む複合施設の建設という思いもしないスケールの計画に育ちました。思い描くのは人の暮らしの中で寄り添い支え合う映画館のかたち。その応援団としてあなたの力をお貸しください。
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はじめに
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- 家族の会話から始まった物語は、映画館を含む複合施設の建設という思いもしないスケールの計画に育ちました。思い描くのは人の暮らしの中で寄り添い支え合う映画館のかたち。もう少しです。その応援団としてあなたの力をお貸しください。
- ことの始まりは、1995年ころからの大宮の変化でした。区画整理により妻方の祖父母の自宅兼アパートだった建物の立ち退きがきっかけだったのです。
大宮西口というエリアは国鉄職員の暮らしが作った町でした。近代に入り、鉄道時代の訪れとともに大宮駅が開業し、汽車の製造整備の工場が据えられると関連施設を含めて約5千人の労働者が働く町そして住まう町として発展したのが西口でした。平成の大合併で大宮市はさいたま市となり、都市計画により区画整理が進んだことでこの地を離れる人も多く、また新たに移り住む人もあり、様変わりを余儀なくされた30年でした。 -
- 祖父もまた国鉄関係の職に従事していた一人であり、当時から自宅は近隣の人との憩いの場としていつも賑わっていたそうで、玄人はだしだった民謡などで変わりゆく地域社会のつながりを絶やさぬよう集う場を提供していました。
行政スケジュールの遅れで建て替え時期はどんどんどんどん延びていき、それに伴い我が家の中心となる世代も変わり、采配は祖父から父へ、そして私へと仕事が回ってきたというのが今回の経緯です。 -
- 父からは、地域の皆さんと仲良く暮らしていけるように、建物の管理は次の世代の人たちが続けられるように、とそんな思いを聞いていました。そしてある日突然「ここに映画館があったら」と思いつき、大勢の人が行き交うイメージが私の頭から離れなくなったのは、祖父母のアパートに集う人たちの楽しげな姿が心に残っていたからかもしれませんし、祖父母の意志を追体験したい、との思いからなのかもしれません。
ごく普通のアパート建て替えに持ち込まれた「映画館」という突飛な考え、しかも言い出したのは門外漢の私です。ところがそれに対しての父の反応はある意味で意外なものでした。
「普通の賃貸住宅を建てるより、そうやって地域の人たちが集える場所になるといいねえ。」
父はそういう人です。 -
- 現在の大宮は毎日約60万人が利用するターミナル駅となり、計画地は西口から徒歩5~6分で賃貸入居率は軒並み90%を超える地域。駅前には生活や娯楽に必要なものは何でもあるのに、何故か大宮には映画館がありません。最近知ったのですが、さいたま市は、全国の政令指定都市の中で唯一いわゆるミニシアターのない都市なのだそうです。
映画館にまつわることを徹底的に調べてみました。興業法、消防法、運営方法、資金の流れ、設備機器とその流通、フィルムとデジタルの違い、配給のしくみ、公的助成の枠組み、etc…。
受付に座ってのんびりお客さんを迎えるような牧歌的イメージでいたものが一転…少なくない数の小規模映画館が、大変な状況だという事がわかりました。 -
- これは一筋縄ではいかないと思いながらも、心はすでに何とかこの状況を乗り越え実現させたいという思いに向かっていました。以前から建て替えの設計相談をしていた建築家の佐々木さんに話してみると、「え?誰がやるんですか?」と驚きながらも、
「色々な人を集めて話し合いましょう、映画館のように公共性を持ったものを造るのなら、必然性を持ったものとしてたちあがるべきです。」
「人は必然性のある空間に入ると落ち着くものです」
チームOttOの始まりでした。 -
代表メッセージ
- 今井 健太 Kenta Imai
- 発案者・ OttO代表。今井設備工事有限会社代表
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- 普段は埃と油にまみれて現場仕事をしている私がこの計画を思い立ってから、早くも5年以上の時間が経過しました。単なる一個人が知り合いも情報も全く無いところから始まり、コロナ禍という予想も出来ない世情の変化の中で構想を練り上げて着工まで漕ぎ着ける事が出来ました。文字通り、この計画の事を考えなかった日は1日たりとも無い日々を過ごしています。その原動力となっているのは「映画館」というものに本当に多くの人が想いを寄せているという事への気付きと、家族をはじめこの計画を誰かに話した時、希望に似た何かを託されるという様な感覚です。幸運にも頼れる仲間と協力者の輪が広がり、実現まであともう少しというところまで来ています。現在は日々この計画の建設現場で汗を流しながら、皆で上手く飛び立てるように出来うる限りの準備を進めています。何事もそうなのかも知れませんが、私たちのこの計画は人の関わりによって支えられ生きるものだと思っています。これから出会うであろう皆さま、ぜひこの計画を応援し支えて頂けたら幸いです。
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ブレインストーミング
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- 2020年春、
コロナ禍で日本中の飲食店や映画館が次々と営業停止となる中、マスク姿でこれからの映画館を創るための議論をする。
集まったのは家族と、アイデアに共鳴してくれた仲間。 -
- 「大宮とはどの様な場所なのか」 「映画は終わりを迎えつつあるのでは?」 「映画館には新しい方法論が必要?」 「まちの映画館の役割とは?」 「映画館はヨーロッパの広場における教会」 「暮らしと経済と映画館をつなぐ」 「標準世帯像の時代による変化」 「共有するという暮らし方の必要性」 「建物の中にまちを作るとしたら?」 「新しい賃貸住宅の収支モデルを」 「経年変化で価値が増すものとは?」 「やりたい事より必要とされること」 「まちの人たちが通り抜けられるような場所に」
このような事を時間をかけて話し合いました。 -
建物を建てる、ということ
- その土地に数十年、もしかしたらもっと先まで残るであろう建築物をつくる行為にはそれなりの責任が生じます。ましてや多くの人が住み、且つ訪れる場所であるなら尚更でしょう。景観だけではなく、その役割における社会性や公共性を大事にしなければ、という私たちの基本姿勢はチームOttOのワークショップにおいて早い段階で導き出されました。
町の人々が必要とする公共性を持った、あるいはかつて持ったであろう空間。
たとえばコンビニエンスストア、たとえば銭湯、たとえば寄席、たとえば井戸端、たとえば食堂、たとえば公衆トイレ。いつでもほんのり明かりが灯り、誰もが安心して集えるサードプレイス。令和の時代に映画館はそんな場所となり得るのだろうか。 -
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- かつて大宮に12館あった映画館がいつの間にかすべてなくなり、その後ひとつも作られないという事実。感傷的にならず冷静に見つめれば当然いくつもの理由があるはずで、OttOにはそこを乗り越えてビジネスとして存続できるような何かが必要なのはいうまでもありません。文化の継承や芸術の復権といったロジックはさておき、家族レベルの計画で経営的にも成り立つ映画館を立ち上げることは可能なのか。そこが課題でした。さらにはコロナ禍。全国の映画館が営業停止を命じられ「不要不急な施設」認定されるなかで果して、金融機関から融資など受けられるのか。
私たちにとって2020年代というタイミングは最悪であった反面、「この状況自体がじつに映画的だよね」という開き直りと共に新しい視点も与えてくれたのです。
そこで生まれたのがシェアハウスと映画館の両立であり、ハブ役としてのカフェを含む複合施設という発想でした。
寿限無ではありませんが「食う寝る処に住む処」、そして「観る処」として同じ建物の中で支え合い、成り立たせるというアイディアだったのです。 -
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様々な出会いの中で
- 【様々な出会いの中で】
知らないことだらけの世界において、ひとりの力で出来ることなどたかが知れています。
この5年間、気になる人に会いに行き、興味のある場所に出掛けて行く中で、多くの偶然や不思議な符号や出会いに後押しされながら仲間と共に計画を進めて来ました。詳しい事はここでは省きますが、ご興味がある方は是非いらしてください。一緒にお話ししましょう。
人の暮らしも、娯楽や学びや経済活動も、全ては関係性の中で支え合っているものです。OttOは、日常の中にあるビオトープのような存在として、さりげなくこの地に創り上げたいと思っています。
ぜひみなさんにも参加して頂けると幸いです。 -
OttO
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- 「イタリアンカフェですか?」なんて聞かれる事もある「OttO」という名称ですが、、、
当時6歳だった息子との会話
「映画館をつくるなら名前を付けないとね、どんなのがいいかな?」
「おっ父がつくるから、おっ父の映画館がいいんじゃない?」
という子供らしい答え。
この「オット」という音に何故か惹かれました。
「Otto」はイタリア語で「8」をあらわす単語で、漢字の「八」は末広がりで縁起が良い。
また、八百万(やおよろず)と表されるように無限のスケール感をはらんでいる。
映画は「第七芸術」と呼ばれ、この計画は暮らしと映画と人の関わりによって第七芸術の先に生まれる「何か」かもしれない、、、
そんなことを考えながら調べると「Otto」は古代ゲルマン語では「相続財産」を意味するとありました。
人が暮らし、楽しみや憩いを共有する場所が自分達の世代の先まで機能するとしたら、何て素晴らしいんだろう。
そんな思いを込めてこの計画の全ては「OttO」という名前になりました。
そして、色々な人との関わりの中でOttOに出来る事を広げて行く意思をもって
「Extended Place」という副題も付けました。 -
OttOはこんな所です
- 1F カフェスペース。
モーニング、ランチ、テイクアウト、ナイトタイム。コーヒーや軽食、お酒も楽しめます。
映画関連の書籍、写真集、雑誌、料理本、小説からコミックまでスタッフの集めた本を眺めるブックカフェとしてもご利用ください。
週末にはマルシェやフリマなども開催。地域の人が集う広場のような空間を目指します。 -
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- 2F 50席のシアター。
階段教室のように傾斜をとった座席、シートは山形の鶴岡まちなかキネマさんから譲り受けたものを取り付けました。
約220インチのスクリーン。
ベビーカーも入れてお子様と一緒に観賞できる親子観賞室(防音室)も完備。
メインに3個、ウーハーを2個、サラウンドは10個搭載した当館の音響ですが、一度映画が始まると、スピーカーの存在が感じられないほど、映画と共に空間が拡張するのです。
OttOは、坂本龍一さん音響監修の109シネマズプレミアム新宿に続く、2番目のBWV cinema(イースタンサウンドファクトリー社)です。 -
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- 3F〜5F
25室のシェアハウス。
Wi-Fi完備。女性用フロアあり。短期滞在から数年単位の契約、はたまた大宮に骨を埋めるというロングのかたまで使い方は自由です。共用のリビングはシアターと同じ2階に位置しており、身近に映画を感じながら暮らせます。 -
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- OttOのエントランスはひとつです。
映画を観る人も、カフェでひと休みの人も、お弁当を買いにきた人も、シェアハウスで暮らす人も、トイレを借りにきた人も、ただ何となく寄った人も、皆が同じ扉から入ります。
それぞれの目的に合わせてOttOをお楽しみください。 -
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この計画に寄せて 建築家 佐々木善樹
- 「映画館をつくりたい・・・!」そんな相談からこの計画は始まりました。
さいたま市が進める土地区画整理事業によって健康で安全な街が形づくられてゆく一方で、希薄になりつつあるまちの個性や地域コミュニティー。そんな中での「映画館をつくりたい」との依頼に一人の設計者としてワクワクしない訳がありません。この地に建主が望む映画館がつくられれば、それは必ず人の交わる「場」となってこのまちの未来を元気で豊かなものにしてくれる事と思いました。
大宮駅周辺にはかつて12件もの映画館があったそうです。現在はといえば離れた場所にシネコンが2件あるのみです。「映画が好きという人は多いのになぜ?」と思います。聞けばそこには多様で複雑な大人の事情があるようですが、私たちは一つのおぼろげな思いとして「映画館を皆で盛り上げてゆけるような仕組みづくりを見出したい」と考えました。運営者が孤軍奮闘するのではなく、観る側と共に手を組み、映画と映画館を盛り上げてゆく仕組みです。
OttO(オット)は映画館とカフェ、そして25部屋のシェアハウスが共存する複合施設として2025年春に完成します。シェアハウスに暮らす25名には映画館に住んでいるような高揚感が得られる事を、1階のカフェには来られたお客様が常に映画を身近に感じてもらえるようなしつらえを、外観には「まちの映画館」として地域の顔となれるような雰囲気づくりを心掛けました。
OttOを実現させるために多くのお金が掛かっています。建主自らが建設工事に携わりコスト削減に努力を重ねておりますが、昨今の建設費の高騰の煽りを受け厳しい状況下が続いています。OttOの建設趣旨にご賛同を頂き、完成への賛助を賜れれば幸いです。そして完成後にはOttOと共に映画を育んで頂ける仲間となって頂ける事を切望しています。 -
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今後の取り組み
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まちの映画館・まちのカフェ、OttOができること
- ・過度な意味付けはせずに「トイレ拝借」も受け入れる、安心して気軽に立ち寄れる場所に。
・昔から地域に暮らす方々と新しく移り住む方々が顔を合わせる事ができる交流の場所に。
・地域の保育園や学童、中高生の課外活動としての利用や、映像作品を通した学びの場所に。
・芸術祭や映画祭などとの連携施設として、さまざまな形での発信拠点の場所に。
・バリアフリー日本語字幕と音声ガイドに対応したユニバーサル上映を行い、映画を楽しむ機会をより多くの人に提供する場所に。
・シェアハウスに暮らす住民と共に創造と発信のあたらしい可能性を発見する場所に。
・この場を利用した小さなビジネスや企画物販などを行えるような、自由な余白のある場所に。
・音楽やワークショップなどの各種イベントを行う場所に。
・地域の企業や団体との連携で割引券などを設定して福利厚生の場所に。 -
さいごに
- ひとりの頭の中に生まれたアイデアのちいさな種が思いもしない形で芽吹き始めました。この芽がどのような花を咲かせるのか。私たちは、関わりの中で変化してゆく全てにワクワクしながら準備を進めています。「きっと一生忘れられない仕事になる」いつもそう話しています。ぜひ応援団に、そして仲間になってください。
『お会いできる日を!』 -
アクセス
- 合同会社OttO
・住所:さいたま市大宮区桜木町1丁目345 OttO(オット)
アクセス:大宮駅西口から徒歩5分(路線:JR・東武野田線<東武アーバンパークライン>・埼玉新都市交通伊奈線<ニューシャトル>)
・メール:info@otto-extended.com
・電話:048-871-8286 (10時30分〜閉店まで) -